最新レポート

2021.03.19

食品通販

通販との相性が悪い?食品ECの現状と売上を伸ばすポイント

通販との相性が悪い?食品ECの現状と売上を伸ばすポイント

食品ECを運営するもなかなか売上が伸びない、食品ECを始めたいが課題が大きく一歩を踏み出せないなど、食品分野にて通販を始める場合は化粧品や健康食品と比べ多くの課題点があります。

しかし、食品EC化が難しいとされている中、課題点を解決し売上をあげる方法はあります。

実際に課題点をうまく取り組むことで、食品EC化を成功している企業は存在します。食品ECは通販との相性が良くないとされていますが、ビジネスモデルとして食品ECに活路を見出している事業者も見受けられます。

今回は、そのヒントとなる情報や食品ECの現状と売上を伸ばすポイントを紹介していきます。


物販系の中でも低い食品分野のEC化率

物販系の中でも低い食品分野のEC化率

BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場が年々増加傾向にありますが、分野別で見るとEC化率に差があります。

BtoC-EC市場の分野では大きく3つに分けられます。

・物販系:「食品 、飲料、酒類」、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」、「化粧品、医薬品、生活雑貨、家具、インテリア」など
・サービス系:「旅行サービス」、「飲食サービス」、「チケット販売」など
・デジタル系分野:「電子出版(電子書籍・電子雑誌)」、「有料音楽配信」など

BtoC-EC全体の市場規模は2018年は18.0兆円に対し、2019年では19.4兆円と前年比7.65%ポイント増となっています。
また、BtoC-EC化率は、2018年の6.22%に対し、2019年では6.76%と前年比0.54ポイント増とEC化率においても増加傾向にあります。

物販系の中でも、「食品分野」の市場規模は2019年は1.8兆円、EC化率は2.89%です。
「化粧品、医薬品」では市場規模6,611億円、EC化率6%。「衣類・服装雑貨等」では1.9兆円、EC化率13.87%と比べ、食品分野のEC化率は物販系分野で最も低いです。

その要因としては、飲食物は人が生きていくには絶対に欠かせないため、「鮮度が命」という特性が他の物販にはないハードルになっているのかもしれません。

そもそも日本国内のEC化が遅れていることが大きな要因ですが、食品EC化率の伸びが良くない原因には個別の理由があるのです。
少なくとも理由を知ることから切実な「伸び悩み」を解消するヒントが見えてくるはずです。

現状ではEC社会での存在感が小さい食品分野ですが、むしろ個人通販や企業のEC事業の売上が伸びれば、国内のEC化率全体の底上げになる、そんな期待や希望が向けられるべき分野といえます。

食品EC化が伸びていない理由とは?

食品EC化が伸びていない理由とは?

食品業界のEC化率の伸びが良くない理由は大きく2つあります。

手に取って鮮度や状態を確かめたい

食品EC化が進まない理由としてはユーザーの「実際に手に取り鮮度や産地を確かめてから購入したい」と考える傾向があるからです。

肉や魚、野菜などの生鮮食品は、鮮度やカタチなど見た目の状態を確認した上で購入する傾向にあります。加工食品ならアレルギーや加工元の原産地を気にする人も少なくありません。

安く買って得をしたと思う以上に、「安心」できる商品かどうかが消費者の一般的な心理です。

そのため、通販では商品を手にとって選べない点が大きなネックになっています。家電製品なら「仕様が同じであればどこで買っても品質は変わらない」と考えられるため、EC化率は30%を超える高水準です。 食品ECを成功させるためは「安心」、「安全」をユーザーに伝えていく必要があります。

実店舗の利便性

食品業界のEC化率の伸びが良くない理由の1つとして、通販よりも実店舗の方が利便性が高い場合があることです。

人口密度の高い地域、とりわけ都心部においてはコンビニエンスストアや24時間営業のスーパーなどの利用頻度が高く、すぐに生鮮食品を手に入れることができるため通販で購入する習慣が根付いていません。

通販は注文から配送まで相応の時間がかかりますが、ブランド問わず目的の商品をすぐ購入するのであれば実店舗のメリットはあります。 また、生鮮食品は賞味期限が短く、配送の設定に時間がかかっては鮮度を保てません。

通販は実店舗に比べて「時間的な利便性の差」で遅れをとっており、さらに「実店舗で容易に購入できる商品」であれば実店舗のほうが便利となってしまいます。であれば、「時間を短縮する」や「通販でしか購入できない希少性」に視点を向けるべきです。

受注から出荷までの業務を効率化できるカートシステムや通販でしか購入できない商品の開発など、実店舗との差を縮める手立てが必要です。

食品ECを成功している各社の取り組み

課題点が多い中、実際に食品ECを運営している企業がどのようにして食品通販を成功しているのかご紹介します。

ec化率の伸びが良くない理由2:手にとって商品を選べない

安心・安全・新鮮を届けるオイシックス・ラ・大地株式会社

オイシックス・ラ・大地株式会社 は、有機野菜、特別栽培農産物、無添加加工食品等、安全性に配慮した食品・食材を扱い消費者へ届けています。
注文が入ってから収穫するため、お米は精米したて、牛乳は搾りたてと新鮮のまま食品を届けています。新鮮のまま購入できるので、通販でも消費者にとっては安心です。

食品ECでは食材の定期通販も行っていることも特徴で、「Kit Oisix 」ではレシピを元に料理方法と食材をセットで届けてくれます。 献立を考える必要もなく、食材の購入、料理の時短ととても利便性を感じます。

頒布会を活用したグルマンマルセ株式会社

グルマンマルセ株式会社 が運営する「GURUMAN VITAL」は、学校給食やスーパーへの卸を母体としていますが、通販を利用して消費者へパンも届けています。

こちらの食品ECではパンのみではなくスイーツも販売していますが、頒布会をうまく利用しているのが特徴です。
頒布会とは定期購入サービスとの違いは?頒布会の特徴とメリット で紹介しているとおり、毎回異なる商品を届ける販売手法を指します。

パン作りのプロが通販限定のパンを提供しており、ここでしか買えないブランド感を提供しています。また、おいしく食べれる冊子をつけ、冷凍による長期保存や食べ方をお伝えして、長く利用できる仕組みです。

食品ECの売上を上げる取り組むべきポイント

マイナス面が目立つ食品ECですが、取り組み次第で売上を上げるための5つのポイントについてご紹介いたします。

食品ECの売上を上げる取り組むべきポイント

積極的な商品の情報提供

食に対する意識が多様化しつつある中で、どのような生産者がつくっているのか、産地はどこなのか、商品の特徴はなにかなど、求められるニーズがあるからこそ商品情報の明記は重要になります。

その期待に応えることが食品ECサイトの事業者側がとるべき行動の大きなポイントといえます。 生産者や商品の情報を積極的に紹介することは、商品自体の信頼性を高め、売上にも結びつきやすくなります。 情報提供を戦略として捉え、積極的にアプローチしていきましょう。

物流拠点の確保

生鮮食品の取り扱いにはその食品に合った適温管理が欠かせません。より多方面の消費者に配送するためには、鮮度を保ったまま保管できる物流拠点をしっかり備えることが大事です。

配送エリアを限定せず全国に向いた視野であれば、なおさら食品に特化した独自の物流拠点が必要になってくるでしょう。

また、物流拠点を拡大することで配送までの時間が短縮し鮮度を保ったまま届けることが可能です。

しっかり管理された状態で届けられる食品は消費者に安心を与え、それが評価となって売上につながっていくはずです。

また、オイシックス・ラ・大地株式会社のように注文が入ってから収穫し配送といった採りたてを届けるサービス活路を見出しています。

物流拠点を備える事業予算が潤沢でない場合、食品の出荷代行サービスや冷蔵・冷凍倉庫のレンタルを利用しましょう。

人的労力やコストの低減にもつながるため、賢明な手段としておすすめします。

商品のブランド化

食品ECの売上を伸ばすポイントとして、商品のブランド化が挙げられます。

無数にあるECサイトの中で勝ち抜くためには、消費者の「買う理由」をつくることがポイントになります。
消費者が自社サイトに訪れなければならない動機、それこそが「商品のブランド化」なのです。

一度味わうと忘れられない風味、食感。例えば、駅前の商店街の、あの店のあのコロッケでないとダメ、といった消費者の思い入れも一種のブランド化といえます。

通販でしか購入できない限定商品や商品にまつわるストーリーや他にはない魅力を取り入れることで、ファンを増やすきっかけにもなります。

ブランド化をすることで、他社サイトや実店舗に対して差別化を図りましょう。

頒布会を取り入れる

頒布会とは、定期的に異なった商品を届ける通販手法のことです。

定期通販は毎回決まった商品を顧客に届けますが、頒布会では頒布会とは定期購入サービスとの違いは?頒布会の特徴とメリット にて記載しているとおり、果物であれば季節の旬な果物、パンであれば春はさくら味、秋は栗の味といった季節感などをお届けすることで、顧客に楽しんでいただけるのが頒布会の魅力の1つです。

顧客へ飽きを感じさせないためにも、頒布会を取り入れることで継続していただけ売上に繋がります。

同梱物を入れる

同梱物の設定を徹底しましょう。

届ける商品以外に挨拶状や購入のお礼メッセージと感謝の気持ちを伝えることで、商品・企業の良さを感じていただけます。
また、届いた商品に合わせた内容だとより活用しやすくなります。

実際に、オイシックス・ラ・大地株式会社の「Kit Oisix」やグルマンマルセ株式会社の「GURUMAN VITAL」では、レシピやおいしく食べれる方法なども一緒に紹介しています。

同梱物を取り入れることで、継続していただく理由にもなります。 同梱物は売上を伸ばす重要なポイントといえるでしょう。

カテゴリー