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2020.12.11
決済方法
決済方法で変わる!ネットショッピングの領収書事情とは?
ネットショッピングでは銀行振込、クレジットカード決済、代金引換決済など支払い方法が多岐に渡るため、領収書の発行が実店舗より複雑となりやすいのが特徴です。
領収書は法律によって発行の義務があるとともに、二重発行してしまうとペナルティも発生するため、EC事業をする際には十分注意しておきたいところです。
そこでネットショッピングの運営者・担当者を対象に、領収書を発行する際に注意すべき点を解説します。
目次
実店舗とECで事情が変わる領収書発行
ネットショッピングにおける領収書発行の事情は、特殊です。
というのも実店舗のように直接、顧客から現金を授受することが少ないからです。
また、電子マネーやポイントを使っての支払いなどもあります。
そのため、EC事業者によって領収書の扱いが異なる事例も多いと言えるのです。
例えば、クレジットカード決済においては、あるネットショッピングモールでは領収書の発行を可能な限り行うポリシーとなっていますが、違うモールではショップの判断に任せられているといったケースがあります。
そもそも、領収書とは商品やサービスの購入に対して、金銭の受領を証明するための書類です。 民法486条には「弁済したものは、弁済を受領した者に対して受取証書の発行を請求できる」とあり、商品やサービスの購入があった場合、店舗は領収書を発行する義務があると定められています。
ここでの弁済は代金の支払い、受取証書は領収書です。 この法律により、支払人は受取証書の発行を請求できます。
EC事業者が注意すべき点は、現金以外で支払われる場合の領収書の扱いと、領収書を二重発行しないことなどです。
次項からは各決済方法における領収書の扱い方について説明いたします。
ネットショッピングの領収書発行の有無:銀行振込の場合
EC事業においては現金以外で受け渡しをするケースが多く、銀行振込はそのひとつです。
この場合、領収書を発行すべきかどうかは重要な事柄です。
結論からいえば、振込明細書が領収書の代わりになるため、必ずしも発行しなくてもよいと言えます。
ただし、支払人が振込明細書を印刷する手間を省きたい場合や、印紙付きの領収書が欲しいといった理由で領収書を請求されるケースがあります。
この場合は、領収書の請求に応じなければなりません。
明確には領収書と振込明細書は違う書類になるため、領収書の発行を求められたら発行義務が生じるからです。
この際、注意すべき点は二重計上です。
領収書を発行する場合は、銀行振込があった日にちを記入しましょう。 但し書きの欄に「○月○日銀行振り込み分」といった記載をします。
なお、契約を行う際に、振込明細書を領収書の発行に代わる取り決めをすることで、領収書発行の義務が生じないようにすることも可能です。
ネットショッピングにおいては適用しにくい面もありますが、特定の顧客相手などに対して業務を簡略化したい場合に有効な方法と言えます。
ネットショッピングの領収書発行の有無:クレジットカード決済の場合
クレジットカードの場合「信用取引」という扱いとされます。
EC事業者側からすると、クレジットカード決済で販売した場合、商品・サービスを提供した段階では金銭や有価証券を受け取っていません。そのため、領収書の発行の義務はありません。
一方顧客からすると、クレジットカードの利用明細が領収書として代用できるので、ショップ側に領収書を請求しなければならないケースは少ないと言えます。
とはいえ、顧客からクレジット払いをした証明として書類を要求される場合はあるでしょう。
業者のなかには「クレジット利用伝票(お客様控)」という形でこの要求に対応しているところもあります。
書類自体の名称は「領収書」とできますが、この場合は但し書きの欄に「但し、クレジット利用(○○カード)」といった内容を書きます。
これにより、領収書となっていますが、厳密にいうと、税法上の領収書にあたる「第17号の1文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書)」とはみなされないのです。
また、購入金額が5万円以上の場合は印紙が必要ですが、クレジットカード決済の場合は必要ありません。
これも、厳密に言うとEC事業者は領収書を発行していないからです。 しかし但し書きを書き忘れてしまうと領収書を発行したことになってしまうため、印紙も必要となるため注意が必要です。
ネットショッピングの領収書発行の有無:代金引換決済の場合
代金引換決済は、ネットショップに代わって運送会社が代金を回収する方法です。
この方法ではEC事業者は直接金銭のやり取りをしていないため、領収書の発行はできません。
代金引換決済では運送会社の受領書が領収書となります。
もし仮にEC事業者が領収書を発行してしまうと、二重発行になってしまうため注意が必要です。
また領収書にあたる運送会社の受領書は、金額が5万円以上の場合は通常、印紙が必要です。 そのため運送会社は印紙代を差し引いた金額を送金することになります。
なお、運送会社が顧客に渡した受領書には「印紙税申告納付〇〇税務署承認済」と記載されており、これが納税の証明となります。
このように代金引換決済の場合は、ショップが顧客に領収書を直接受け渡すことはありません。 しかし、確定申告の経費申請用などさまざまな理由で顧客から領収書の発行を要求されることがあります。
領収書は税務上の証憑書類であり、間違えて発行すると不正行為となってしまうので注意が必要です。
不特定多数の人々と取引をすることが多いEC事業においては、顧客の決済方法をデータベース化できる顧客情報管理システムなどが必須と言えるでしょう。
運送会社ではなくショップ名義の領収書が求められた場合や、個人名宛ての領収書ではなく会社宛てに変更してほしいという理由で、領収書の発行を請求されることがあります。
こうした場合は、運送会社の受領書の原本を送ってもらいましょう。
この原本を破棄すれば二重発行とならないため、領収書を発行できます。
ポイント払いの分は差し引いて!
店舗によっては購入金額ごとにポイントを付与し、一定以上貯まった場合にポイントで買い物できるようにしています。
大手のネットショッピングサイトや実店舗の家電量販店などでよく使われている仕組みです。
ポイントを利用した金額は、通常値引き扱いとなります。
これは、例えば楽天などのモールによるポイントであっても独自に付与するポイントである場合でも同じです。
値引き扱いなので、領収書にはポイントを差し引いた金額を記述します。
もし、客がポイントで全額支払った場合には、金銭のやり取りが発生していないため、領収書の発行自体ができません。
領収書の発行はPDFの電子交付が便利
EC事業者は不特定多数の顧客を対象にすることが多いため、さまざまな決済方法に対応する必要があります。
現実的には、領収書を請求された場合にその都度郵送していては対応しきれない場合がほとんどでしょう。
このような場合は、PDFで領収書を電子交付する方法が最適です。
領収書をPDFで電子交付するメリットは「郵送費が節約」「手間の削減」「印紙不要(印紙代の節約)」です。
PDFをメールやFAXで送信すれば、郵送費はかかりません。封入や投函の手間も削減できます。
また国税庁の公式ホームページによると、PDFをメールやFAXで送信すると、文書が存在せず課税対象がないという扱いとなるため印紙が不要です。
5万円以上の売上でも収入印紙を貼る必要がないため、印紙代の節約が可能です。
ただしPDFを印刷して渡してしまうと、書類という扱いになるので、印紙が必要となる点は注意しましょう。
なお印紙税の納税義務者は交付者なので、顧客が印刷しても印紙は必要ありません。 PDFでの領収書の電子交付は顧客としても、スピーディに領収書が受け取れるうえ、必要ならば印刷できるので便利なのです。
ただし領収書を紙で要求する顧客もいることから、できれば両方のケースに対応できるシステムをショップが持っていることが望ましいと言えるでしょう。
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